2021-3-1 改定
■1960年代を彩った雑誌たち■
企画展「雑誌の中の1960年代」(5月9日まで)を開催しています。変化していく暮らしを家庭の立場から見つめた生活雑誌『暮しの手帖』やアイビー・ルック、ミニスカートなど新しいファッションの「格好良さ」を提案した『MEN'S CLUB』、様々な女性誌、週刊情報誌、週刊漫画雑誌などを通して時代の雰囲気を探ります。会場資料「雑記帳」その一も発行しました。週刊漫画の話が中心です。よろしかったらどうぞ。
雑誌を読んでみませんか<第2弾>
企画展「雑誌の中の1960年代」で展示している雑誌の一部を平日限定でご覧いただけます。第2回の閲覧雑誌は、①平凡パンチ1965年2月8日号。②暮しの手帖第2世紀3号。③少年マガジン1968年7月21日号。④マーガレット1968年8月25日号。⑤装苑1964年6月号の5冊です。
少年マガジンには「巨人の星」や「あしたのジョー」といった伝説的名作のほか「ゲゲゲの鬼太郎」、「天才バカボン」も連載されています。ぜひ、「実物の雑誌」の中の1960年代を自分の目で確認してください。
※管理の都合上、閲覧にはサロン側受付で簡単な申請書を書いていただきます。
■入館の際のお願い■
新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、入館に際しては、マスクを着用し、用意してある消毒液をお使いのうえ、密集を避けてご観覧ください。また、発熱、咳症状があるなど体調不良の方は入館をお控えいただくようお願いします。
■編集者・横溝正史■
神戸出身の探偵小説作家、横溝正史が編集者をしていた時代の雑誌を新たに常設展示化しました。横溝は大正15年夏、江戸川乱歩の電報に呼び出されて上京。そのまま博文館に入社して『新青年』の編集に携わり、6年後の昭和7年に博文館を退社して専業作家になります。
展示しているのは、横溝の編集者デビューとなった大正15年10月発行の『新青年』(復刻版)と編集者として最後の仕事となった昭和7年8月発行の『探偵小説』最終号。また、横溝が雑誌編集をするうえで影響を受けたと随筆に書いている『女性』、『苦楽』(いずれも大阪のプラトン社発行)も展示しました。どうぞご覧ください。
神戸文学館は、明治37年(1904)関西学院のチャペルとして建てられた由緒ある建築です。
歴史を感じる赤レンガ造りのチャペルの外観をそのまま残して平成5年4月に、尖塔部分も完全に復元し、以来王子市民ギャラリーとして神戸市民に親しまれてきました。
このたび、あの阪神・淡路大震災も乗り越えた、市内に現存する最古のレンガ造り教会建築物が、神戸にゆかりのある文学者たちの息吹を、今に伝える「神戸文学館」として、生まれ変わることとなりました。
神戸文学館は明治以降の神戸にゆかりのある文学者を時代ごとのテーマに沿って紹介しています。
またサロンでは、神戸を愛し、神戸を描いた作家達の作品を自由にご覧いただけます。(入館無料)
平成18年12月4日「神戸文学館」として、内装をリニューアルして開館しました。
正面から見た神戸文学館
南東から見た神戸文学館
ライトアップに映える文学館
満開の桜と文学館
前庭に咲く紫陽花
正面玄関
関西学院発祥の地
記念碑は、創設者ランバスの自筆サイン、吉岡美國 第2代院長の自筆サインと 「敬神愛人」、 ニュートン 第3代院長の自筆サイン、ベーツ 第4代院長の自筆サインと ”Mastery for Service" さらに学院沿革の碑文が刻まれ、旧礼拝堂階段の飾り石が配置
関学を創ったひとたち(関学のホームページから)
1904年10月 献堂式のブランチ・メモリアル・チャペル
関西学院 原田校の航空写真
1910年頃のブランチ・メモリアル・チャペルと校舎ブランチ・メモリアル・チャペルでの講話風景
平成5年4月、設計・一粒社ヴォーリズ建築事務所、建築・新井組により、明治37年(1904)建築当時(110年前の外観)に甦りました。
戦災で失われたままだったチャペルの尖塔や柱頭の飾りを古い写真を元に再現されました。柱頭の飾りは、アカンサス模様でまた梁の根元にも彫刻が施されています。
このチャペルの特徴は、ハンマービーム・トラスと呼ばれる大きなアーチ型の梁を組んで屋根を支えているところです。
スパン10.6mもあり歴史的にも貴重な建築物です。外壁は焼夷弾により焼けた傷跡のあるレンガを一部そのまま使っています。レンガの積み方はイギリス積み(レンガには他にフランス積みアメリカ積み等がある)。
瓦も昔の瓦の色に合わせて、数種類の瓦をまぜてわざと古い感じを出しています。ステンドグラス窓にも大きな特徴があり、色は2種類ですがラムネ色をしています。また窓ガラスにも特徴があり葡萄曼文様の装飾(エッチング)が施されています。窓ガラスの開閉取っ手も、飾り石と同じ模様で造られています。
神戸文学館は、神戸市内に現存する最古のレンガ造りの教会建築としてその優美な姿を21世紀に伝えていくことでしょう。
明治・大正・昭和・平成の時代ごとに、神戸で活躍した作家を当時の風景写真とともに作品や原稿、資料、愛用品を展示紹介しています。
神戸ゆかりの作家として小泉八雲、谷崎潤一郎、横溝正史、賀川豊彦、稲垣足穂、モラエス、竹中郁、遠藤周作、島尾敏雄、久坂葉子、司馬遼太郎、石川達三、林芙美子、堀辰雄、野坂昭如、陳舜臣、妹尾河童、岡部伊都子ら42人の作品や資料を展示しています。
常設展示コーナー
竹中郁コーナー
岡部 伊都子コーナー
憩いの場所コーナー(香り高いコーヒーを楽しみながらの読書をどうぞ)
ハンマービーム・トラスの天井
葡萄蔓文様の窓ガラスと開閉取っ手
企画展「久坂葉子がいた神戸」の展示コーナー(この企画展は終了しています)
土曜サロン・文学講座
土曜サロン・コンサート
神戸文学館を設計した一粒社ヴォーリズ建築事務所は、1910年(明治43年)創立以来数多く設計建築しています。
今でも現存している建物は、大丸百貨店(心斎橋店、京都烏丸店、神戸居留地38番館)関西学院大学、神戸女学院大学、啓明女学院、同志社大学、滋賀大学、豊郷小学校、近江兄弟社学園、明治学院大学他、フロインドリーブ・パン工房(旧神戸ユニオン教会)、パルモア学院、神戸YMCA、カネディアンアカデミー、六甲山神戸ゴルフ倶楽部のクラブハウス、ヴォーリズ、六甲山荘、その他教会、学校、病院、邸宅等が多数残っています。
経済白書が「もはや戦後ではない」と書いてから4年、右肩上がりの高度経済成長へと突き進んでいく1960年代が始まりました。
電化製品やインスタント食品が一般家庭に普及し始め、憧れだった洋風生活が現実のものに変わっていきます。そんな時代に生活雑誌『暮しの手帖』は商品テストなどを通して、新しく便利な暮らしを見つめ続けました。1960年代の『暮しの手帖』からは時代が生み出した流行と課題が透けて見えます。
ファッションの世界ではアイビー・ルックやミニスカートなど現在にも続く新しいスタンダードが登場。流行の背景には「格好良さ」を提案する『MEN'S CLUB』や女性向けファッション誌、『平凡パンチ』など週刊情報誌の存在がありました。また、週刊の漫画雑誌が部数を伸ばしていったのもこのころ。連載されている漫画は時代を反映しながら、一方では新しい文化も創造していきます。
1960年代の雑誌のいくつかを紹介しながら、カラフルに彩られてゆく時代の雰囲気を探ってみます。
■ 展示内容
※ 1960年代の『MEN’S CLUB』、『暮しの手帖』、『装苑』、『平凡パンチ』、『プレイボーイ』等
※ 1970年の『an・an』創刊号
※ 1960年代の週刊少年、少女漫画雑誌。『少年マガジン』、『少年サンデー』、『少年キング』、『マーガレット』等
※ 1960年代の漫画雑誌『COM』等
※ VAN JACKETのワッペン等
※ 1960年代の神戸の写真
※ 1960年代のレコードジャケット
※ その他
2021年1月22日(金)~5月9日(日)
開催中の企画展「雑誌の中の1960年代」(5月9日まで)に展示されている男性服飾雑誌 『MEN’S CLUB』は当時の若者のファッションリーダー的な存在でした。芝生の庭や白い洋館を背景に、当時、人気ブランド「VAN」などのジャケットに細身のパンツや、涼しげなマドラスチェックのシャツを着た男性モデルたち。実に洗練され、かっこいい。1960年生まれで、同時代後半は小学生だった私には初めて目にするものばかりでした。
私の当時の記憶は、オート三輪に乗った酒屋や米穀店の御用聞き、雨が降ればわだちに水たまりができる未舗装の路地や裏道、空き地に積まれた土管の山。1円から買い物ができた駄菓子屋は私たち子供にとって天国でした。ひざ部分が擦り切れ、パッチで修理したズボンをはき、中古で買ってもらった自転車を乗り回す。質素な時代のイメージで、「VAN」などが目指した〝大人の世界〟は想像できませんでした。
ある日、親戚の結婚式用にと紺色のブレザーを父が買ってきました。小学生でしたので「まだ成長するから」とやや大きなサイズ。鏡に映すとやぼったい姿でしたが、何か背筋が伸び、大人に近づいた感覚が忘れられません。そのブレザーの裏にあったラベルは「VAN MINI」。私にとって1960年代を生きた〝証〟を見つけました。(館長)
1枚の写真を眺めていました。山麓に林立するマンション群、その間に埋もれるように建っている異人館らしい建物が2つ。次の企画展「異人館の街角」で展示するため神戸アーカイブ写真館で借りた白黒写真です。写真に付いていた説明には1979年に撮影された北野異人館とあるだけ。写真の場所が分からないと企画展で使うのには少し困ります。
何か場所の手がかりになる情報が写ってないかと拡大しましたが、ヒントはありません。しかし、拡大していない写真を見ていると山の中にある谷間の地形に気が付きました。北野町あたりの地図を見ると谷間の地形は2カ所だけです。
今は便利な時代。パソコンで航空写真を見ることができますし、3Dモードにすれば空を飛んでいる鳥の視点になります。そこで谷間の地形あたりを「鳥になって飛んで」みると、写真と同じような光景が見つかりました。
写っていた異人館はシュウエケ邸と門兆鴻邸(現在非公開)。明治に建てられて以来、姿を変えずに残っている異人館だからこそ味わえる発見の喜びでした。
企画展の準備はいつもこんな風に進んでいきます。(学芸員 北村暁子)
1980年代のある日、作家の中島らもは「目を疑う」光景に出くわしました。阪神電車の元町駅で見かけた長髪の男性がベルボトムのジーンズをはいていたのです。中島らもは高校のころ神戸で過ごした経験がありました。1960年代後半のことです。長髪にベルボトムジーンズというのはそのころの流行でした。20年あまりの時を経て目にした光景。タイムスリップしたような感じだったかもしれません。
六、七〇年代じゃあるまいし、いまどき長髪でベルボトムのジーンズをはいている人がこの世にいるとは、いくらファッション音痴の僕でも虚をつかれた感じで、ポカンと口をあけてしまった。(中島らも『僕に踏まれた町と僕が踏まれた町』元町駅の怪しい男)
この短いエッセイの中で、中島らもはファッションの世界にリメイクやリバイバルがあることを指摘しています。それにしても、と考え込みました。
やはり幻覚だったのだろうか。同じ幻覚なら、超ミニの女の子のほうがよかった気もするけど……。(引用文同上)
私が高校生だった1980年代に流行していたファッションも20年ほど前のアイビー・ルックのリバイバルだったそうです。『MEN’S CLUB』のアイビー・ルック特集を懐かしく感じた理由がわかりました。(学芸員 後中友里恵)
神戸市は、このほど神戸文学館と隣接する王子公園を整備、大学の誘致を発表しました。大半の施設が老朽化していることから2021年度に動物園とスポーツ施設の再整備に着手、用地を確保した上で22年度に大学を公募します。
阪急「王子公園駅」に隣接する利便性の高さ、神戸文学館をはじめ美術館など文化施設の集積を生かし、大学誘致による若い年代層の呼び込みを期待しているようです。
歴史を紐解けば、王子公園周辺は、かつて「原田の森」と呼ばれ、アメリカ人宣教師ランバスが1889年に創設した関西学院の発祥の地でした。近くの神戸市立葺合高校の位置には、神戸大学のルーツ、神戸高等商業学校が1902(明治35)年に設置されました。いずれも移転しましたが、一時「原田の森」は大学生でにぎわったことでしょう。
王子公園周辺が、関西有数の文教地区として復活する日は遠くありません。大学生が集う地区の一角を占めることとなる神戸文学館の役割を再考し、準備しなければと思います。(館長)
水内館長の後任の小阪英樹です。よろしくお願いします。「文学」の門外漢で、正直、気後れしています。拠り所にしているのは引き継ぎに際しての前館長からのアドバイス。「自分がやりたいことを好きなように」。そんな精神を忘れず、「文学」と向き合いたいと思います。当分は右往左往の日々ですが、みなさんのご指導を重ねてお願いします。(館長 小阪英樹)
令和3年3月 6日(土) 午後2時~3時半
川柳作家でエッセイストの時実新子(岡山県生まれ、1929年1月23日~2007年3月10日)の名句を鑑賞します。新子は長年にわたり神戸新聞文芸の川柳壇選者としても活躍。作家生活は50年以上におよび、その作品は今なお読まれ続けています。
新子作品を5年区切りで読み返すコーナーでは、1985~1989年の新子56歳から60歳のころを取り上げます。その間の1987年にはベストセラーとなった句集『有夫恋』が発行されました。現代川柳を一般に広げ、新子自身も作家活動が飛躍しました。
土曜サロン開催に合わせて「いま、こころに響く新子の句」を募集します。
時実新子の句1句とコメント(150字以内)をsenryuso@yahoo.co.jpまでお送りください。締め切りは2月28日。送ってくださった方には「いま、こころに響く新子の句」を冊子にして進呈します。土曜サロン参加者にも配布します。
3月13日(土) 午後2時~3時半
落語家・露の吉次さんが落語の成り立ちや落語家のことなどを解説した後に一席披露します。落語初心者の入門編として気楽にお越しください。落語の演目は古典落語の「千早ふる」です。
「笑う門には福来たる」。笑いが絶えない家庭には幸運が訪れるという意味です。実際、笑うことでストレス解消や免疫力が向上するなど健康にも良いようです。「笑う門」には幸福も健康も来てくれるということではないでしょうか。
二つの意味を持つ言葉を一つの音で「洒落る」。同音異義の洒落、言葉遊び。落語家的洒落を暮らしに取り入れて、みなさんにも笑いと元気が来ますように。