2022-6-24 改定
「愛媛発 旅するネコ 兵庫上陸 かなしきデブ猫ちゃんの世界」展を人道的危機にあるウクライナの子どもたちを救うため、緊急募金を始めました。募金箱は入口近く設置。
いただいた浄財は、ユニセフを通じて現地ウクライナの子どもや、その家族の支援に役立てます。
神戸文学館は、明治37年(1904)関西学院のチャペルとして建てられた由緒ある建築です。
歴史を感じる赤レンガ造りのチャペルの外観をそのまま残して平成5年4月に、尖塔部分も完全に復元し、以来王子市民ギャラリーとして神戸市民に親しまれてきました。
このたび、あの阪神・淡路大震災も乗り越えた、市内に現存する最古のレンガ造り教会建築物が、神戸にゆかりのある文学者たちの息吹を、今に伝える「神戸文学館」として、生まれ変わることとなりました。
神戸文学館は明治以降の神戸にゆかりのある文学者を時代ごとのテーマに沿って紹介しています。
またサロンでは、神戸を愛し、神戸を描いた作家達の作品を自由にご覧いただけます。(入館無料)
平成18年12月4日「神戸文学館」として、内装をリニューアルして開館しました。
正面から見た神戸文学館
南東から見た神戸文学館
ライトアップに映える文学館
満開の桜と文学館
前庭に咲く紫陽花
正面玄関
関西学院発祥の地
記念碑は、創設者ランバスの自筆サイン、吉岡美國 第2代院長の自筆サインと 「敬神愛人」、 ニュートン 第3代院長の自筆サイン、ベーツ 第4代院長の自筆サインと ”Mastery for Service" さらに学院沿革の碑文が刻まれ、旧礼拝堂階段の飾り石が配置
関学を創ったひとたち(関学のホームページから)
1904年10月 献堂式のブランチ・メモリアル・チャペル
関西学院 原田校の航空写真
1910年頃のブランチ・メモリアル・チャペルと校舎ブランチ・メモリアル・チャペルでの講話風景
平成5年4月、設計・一粒社ヴォーリズ建築事務所、建築・新井組により、明治37年(1904)建築当時(110年前の外観)に甦りました。
戦災で失われたままだったチャペルの尖塔や柱頭の飾りを古い写真を元に再現されました。柱頭の飾りは、アカンサス模様でまた梁の根元にも彫刻が施されています。
このチャペルの特徴は、ハンマービーム・トラスと呼ばれる大きなアーチ型の梁を組んで屋根を支えているところです。
スパン10.6mもあり歴史的にも貴重な建築物です。外壁は焼夷弾により焼けた傷跡のあるレンガを一部そのまま使っています。レンガの積み方はイギリス積み(レンガには他にフランス積みアメリカ積み等がある)。
瓦も昔の瓦の色に合わせて、数種類の瓦をまぜてわざと古い感じを出しています。ステンドグラス窓にも大きな特徴があり、色は2種類ですがラムネ色をしています。また窓ガラスにも特徴があり葡萄曼文様の装飾(エッチング)が施されています。窓ガラスの開閉取っ手も、飾り石と同じ模様で造られています。
神戸文学館は、神戸市内に現存する最古のレンガ造りの教会建築としてその優美な姿を21世紀に伝えていくことでしょう。
明治・大正・昭和・平成の時代ごとに、神戸で活躍した作家を当時の風景写真とともに作品や原稿、資料、愛用品を展示紹介しています。
神戸ゆかりの作家として小泉八雲、谷崎潤一郎、横溝正史、賀川豊彦、稲垣足穂、モラエス、竹中郁、遠藤周作、島尾敏雄、久坂葉子、司馬遼太郎、石川達三、林芙美子、堀辰雄、野坂昭如、陳舜臣、妹尾河童、岡部伊都子ら約40人の作品や資料を展示しています。
常設展示コーナー
竹中郁コーナー
岡部 伊都子コーナー
憩いの場所コーナー(香り高いコーヒーを楽しみながらの読書をどうぞ)
ハンマービーム・トラスの天井
葡萄蔓文様の窓ガラスと開閉取っ手
企画展「久坂葉子がいた神戸」の展示コーナー(この企画展は終了しています)
土曜サロン・文学講座
土曜サロン・コンサート
神戸文学館を設計した一粒社ヴォーリズ建築事務所は、1910年(明治43年)創立以来数多く設計建築しています。
今でも現存している建物は、大丸百貨店(心斎橋店、京都烏丸店、神戸居留地38番館)関西学院大学、神戸女学院大学、啓明女学院、同志社大学、滋賀大学、豊郷小学校、近江兄弟社学園、明治学院大学他、フロインドリーブ・パン工房(旧神戸ユニオン教会)、パルモア学院、神戸YMCA、カネディアンアカデミー、六甲山神戸ゴルフ倶楽部のクラブハウス、ヴォーリズ、六甲山荘、その他教会、学校、病院、邸宅等が多数残っています。
■ 趣 旨
デブ猫「マル」の冒険を描いた『かなしきデブ猫ちゃん』は、作家早見和真さんと、絵本作家かのうかりんさんによる創作童話です。2018年4月から愛媛新聞で第1作「かなしきデブ猫ちゃん」の連載がスタート。地元愛媛を巡る悲喜こもごもの冒険は大人気。〝愛媛で知らない子供はいない〟ほど親しまれ、第2作『マルの秘密の泉』、第3作『マルのラストダンス』と連載を重ねました。2022年4月からは舞台を兵庫県に移した第4作『マルのはじまりの鐘』が神戸新聞で始まりました。
企画展では神戸新聞紙上で兵庫を旅するデブ猫「マル」をもっと知ってもらおうと、愛媛新聞掲載の第1作から第3作、神戸新聞連載中の第4作を紹介。愛媛生まれのニューヒーロー「マル」の世界を楽しんでいただき、兵庫五国を巡る冒険の旅を応援してください。
■2.展示内容
・第1作『かなしきデブ猫ちゃん』、第2作『マルの秘密の泉』、第3作『マルのラストダンス』の各あらすじ、画像など
・第1作~第3作の閲覧コーナー設置
・作者である早見和真、かのうかりんの主な著作を展示と、一部閲覧
・「かなしきデブ猫ちゃん」公式グッズの展示
・撮影用に兵庫県立兵庫工業高校作成のデブ猫「マル」のオブジェを設置。
・7月23日、8月27日の土曜サロンで「かなしきデブ猫ちゃん 親子おはなし会」開催。
2022年6月24日(金)~9月11日(日)
神戸ゆかりの作家陳舜臣が書いた全推理小説の単行本初版と文庫本が、このほど六甲歴史散歩会代表などを務める神戸市灘区の前田康男さん(74歳)=写真=から神戸文学館に寄贈されました。
中国歴史小説の作家というイメージが強い陳舜臣ですが、デビュー作は推理小説『枯草の根』(1961年)で、江戸川乱歩賞を受賞。以降、ミステリー作家として作品を世に出し、1969年に直木賞、1970年には日本推理作家協会賞に輝いています。 前田さんは神戸市灘区生まれ。高校時代に地元神戸を舞台にした陳舜臣の推理小説を手にして以来のファン。その全推理小説を社会人時代に読破、50歳からは初版本の収集にも手を広げます。古書店や古本市を巡り、コツコツとそろえ、60歳で全巻達成しました。 その間、好きが高じて2015年に神戸で開館した「陳舜臣アジア文藝館」のボランティア・スタッフを買って出ます。受付のほか彼の作品に登場した神戸ゆかりの地を巡るイベントでは企画、ガイドを担当するなど地元神戸が生んだ小説家陳舜臣の顕彰に力を注ぎました。 75歳を迎える今年、身辺整理中に「私の死後、家族に捨てられたり、古本屋へ売られたりするぐらいなら」と思い立ち、神戸ゆかりの作家の資料を収集展示している神戸文学館に寄贈を決意されました。寄贈されたのは初版単行本約50冊、文庫本約70冊。本を保護するため、すべてに硫酸紙がかけられ、状態も良好なものばかりでした。 「陳舜臣先生の推理小説が大好き」という前田さんにお気に入りはと尋ねると、真っ先に上がったのは『枯草の根』。神戸の華僑社会を舞台に、名探偵陶展文が殺人事件を解決していきます。陶展文が中華料理店店主で拳法の達人という設定や、当時の街並の描写が興味深く、ミナト神戸らしい作品です。 今回、神戸文学館に寄贈した推理小説について前田さんによると「神戸を舞台にした優れた作品が多いが、古書店でも入手困難となっている。ぜひ、今後の陳舜臣研究に役立ててほしい」と話していました。陳舜臣のまとまった推理小説コレクションは、神戸文学館にとっても貴重な資料となります。企画展などで展示していきたいと思います。 (館長)
「ママ、なんでマルはかなしいの」。
毎週土曜日に神戸新聞で連載中の「かなしきデブ猫ちゃん マルのはじまりの鐘」を3人の子どもに読み聞かせていた時でした。8歳の長男から唐突に問われた一言。なぜ、主人公のデブ猫マルは〝かなしき〟ネコなのか。 ・「捨て猫だったから」 ・「飼い猫になって食べすぎて太ってしまい、味気ないダイエットフードを食べなければならなくなった」 ・「新しく家族になった血統書付きのネコばかり可愛がられている」 ・「飼い主のアンナにまでデブ猫と言われてしまった」あれこれと考えをめぐらせましたがいずれも回答としてはしっくりきません。「かなしきデブ猫ちゃん」シリーズは冒険談。悲しみ、苦しみや、困難を克服してマルが成長していく物語。なぞは一層、深まりました。
基本に返り「かなしき」という言葉を調べました。古めかしい表現なので古語辞典を紐解くと、「かなしき」は形容詞「かなし」の連体形とありました。「かなし」は①「愛し」②「悲し」「哀し」の漢字があてられます。タイトルは平仮名なので、てっきり「悲しき」デブ猫ちゃんと思い込んでいましたが、①「愛し」を当てると「しみじみとかわいい、いとしい」の他に「身にしみておもしろい、すばらしい、心が引かれる」。②の「悲し」「哀し」では「切なく悲しい」、「ふびんだ、かわいそうだ」など。
愛想はないけれど癖になるかわいさで、周囲の幸せのために奔走するマル。日に日にたくましくなる姿には「悲しき」より「愛しき」が、ぴったり合う気がします。あるいは平仮名表記にすることで両方の意味をかけているのかもしれません。
とはいえ何となくモヤモヤした気分の中、神戸新聞で作者早見和真さんのインタビュー記事が目にとまりました。「『かなしき』は『悲しき』だと思われがちだけど、漢字を当てるなら『哀』であり『愛』。人間だとしらじらしくなるような、哀愁漂う〝令和のハードボイルド″を背負わせたかった」 (神戸新聞朝刊2022年4月12日付)
確かに人間を「愛しき」と呼ぶのはこそばゆいものですが、ネコならすんなり受け入れられそうです。 やっとたどり着いた答え。〝なぜ〟を抱えたままの長男に早く伝えなければと思います。 (学芸員 北村暁子)
7月 9日(土) 午後2時~3時半
関西学院グリークラブは3年ぶりに「里帰りコンサート」を開催します。関西学院の発祥の地「原田の森」に残る神戸文学館で、ご縁のある皆様に、創立時に想いを馳せながらの演奏を楽しんでいただければと思います。 プログラムは「Old Kwansei」「空の翼」など校歌のほか「時代」「上を向いて歩こう」など世代を超えて歌い継がれている名曲も用意。今回は、米国を中心に発展した独特のアカペラ四部合唱のバーバーショップ様式に加え、各パートの代表者によるカルテットでも歌い上げます。 関西学院グリークラブの魅力が詰まった演奏会となっています。ぜひご期待ください。定員50人 申込先着順 参加料:200円
7月23日(土) 8月27日(土)
企画展「かなしきデブ猫ちゃんの世界」の関連事業として「親子おはなし会」を開催します。創作童話「かなしきデブ猫ちゃん」を神戸大学放送委員会が朗読します。ご家族、またはおひとりでもお越しください。お待ちしています。 日時は7月23日、8月27日の各①13時~13時30分、②15時~15時30分。 参加費は大人200円、小学生以下無料。定員は各50人で先着順。 申し込み問い合わせは神戸文学館まで。 (電話078-882-2028、Eメールkobebungakukan@river.ocn.ne.jp)